近年、実際にいろいろな食事術が提案されていますが、今回はその基本となりうるであろう知恵についてお伝えしたいと思います。
食事術に関する基本とは、人と食事の相性を知ること
つまり適切な食事とは、人の体質によって異なるということです。
ですから、この知恵は、必ず食事内容に取り入れる必要があります。
この知恵は、最も優れた医学理論と言われているアーユルヴェーダ(インド医学)によるものです。 そもそもアーユルヴェーダというのは、生命の科学と言われ、神々から伝えられたと聞きます。
何よりもそれを実践した時に得られる結果を見れば、その理論が真理であるかどうかが判ると思います。
この理論に基づいた適切な食材は、実際に私の身体に合っている感覚があります。また、実際に好きな食材が多いのも事実です。
それでは、具体的にお話しします。
アーユルヴェーダは、3つのエネルギー理論から始まる
アーユルヴェーダでは、万物は、3種類の気(エネルギーのようなもので、アーユルヴェーダでは「ドーシャ」という)から成り立っていると考えています。
そして、全体としてどれか1つのドーシャが優勢で、その性質を示すといいます。
3つドーシャは、「ヴァータ」、「ピッタ」、「カファ」と呼ばれています。
ヴァータとは、乾いた性質で、さらに軽いと寒い性質を併せ持ちます。
ピッタとは、熱い性質で、さらに軽いと湿った性質を併せ持ちます。
カファとは、重い性質で、さらに寒いと湿った性質を併せ持ちます。
これは、もちろん人間にも当てはまり、ヴァータ体質の人と、ピッタ体質の人と、カファ体質の人に分かれます。
ただ注意が必要なのは、一番優勢なドーシャの次に強いドーシャの種類によって、体質にも少しバリエーションがでてくることです。
例えばヴァータ体質の人の場合、次に強いのがピッタかカファかで少しは違いが出てくるので、それを考慮する必要がある場合もあります。
まずは一番優勢なドーシャから、それに適した食事を考えることが重要であることに変わりはありません。
なお、竹下雅敏氏は、東洋医学セミナー(アーユルヴェーダⅣ)で、ヴァータをさらに2つに分け、それぞれを太陽のヴァータと月のヴァータと命名し、4体質としてその詳細を開示されています。
実際に、ギリシャでは、ヒポクラテスの4体液質という体質論が使われていましたが、これは、アーユルヴェーダがギリシャに伝わり、そして生まれたと言われています。
ご興味がございましたら、竹下雅敏氏の東洋医学セミナーをご視聴してください。
食品も、もちろんドーシャにより分類できる
そして食品のドーシャは、その味によってほぼ分類することができるといいます。 アーユルヴェーダでは、味は甘味、酸味、塩味、苦味、辛味、渋味の6種類と考えています。
ヴァータの性質を有する食品は、主に苦味を有し、ピッタとカファを減らします。
ピッタの性質を有する食品は、主に酸味を有し、カファとヴァータを減らします。
カファの性質を有する食品は、主に甘味を有し、ヴァータとピッタを減らします。
6種類の味が、各ドーシャに与える影響は下図のとおりです。
| ヴァータ | ピッタ | カファ |
甘味 | ↓↓ | ↓ | ↑↑↑ |
酸味 | ↓ | ↑↑↑ | ↑ |
塩味 | ↓↓↓ | ↑↑ | ↑↑ |
苦味 | ↑↑↑ | ↓↓ | ↓↓ |
辛味 | ↑ | ↑ | ↓↓↓ |
渋味 | ↑↑ | ↓↓↓ | ↓ |
(出典:大いなる生命額:青山圭秀著、三五館)
このような食材のドーシャにおいて、実際には味だけで見分けるのが難しい食材も多々ありますので、主な食品類ドーシャを以下に示します。
お米や小麦などの穀物やイモ類は、全てがカファの性質を有します。
果物は、全てがカファの性質を有します。
お肉は、全てがカファの性質を有します。
お魚は、全てがカファの性質を有します。
豆類は、ほぼ全てがヴァータの性質を有します。
種子は、全てがカファの性質を有します。
キノコは、全てがカファの性質を有します。
乳製品は、ほぼ全てがカファの性質を有します。
野菜やスパイスは、種類により様々のドーシャを有します。
海藻類は、全てがヴァータの性質を有します。
油類は、ほぼ全てがカファの性質を有します。
塩は、ピッタの性質を有します。
酢は、ピッタの性質を有します。
砂糖は、カファの性質を有します。
蜂蜜は、例外でヴァータの性質を有します。
お酒類は、ピッタの性質を有します。
コーヒーは、カファの性質を有します。
紅茶は、カファの性質を有します。
日本茶は、カファの性質を有します。
食物は、身体を温める作用か、冷やす作用かのどちらかを有する
食物は、胃に入ると身体を温めるか、身体を冷やすかのどちらかの作用を発揮します。
ヴァータの性質を有する食材の中でも、例えば小豆は身体を若干温めますが、大豆は身体を若干冷やします。
ピッタの性質を有する食材の中でも、例えば日本酒は身体を温めますが、ビールは身体を冷やします。
カファの性質を有する食材の中でも、例えばお米は身体を若干温めますが、小麦は身体を若干冷やします。
このように食材の寒熱は、ドーシャだけでは判断できず、原料によりその性質が異なるようです。
アーユルヴェーダが推奨する食事術とは?
アーユルヴェーダでは、どの体質の方でも、ドーシャのバランスが取れるように、基本的には6つすべての味を食事に取り入れることが求められています。
さらに、アーユルヴェーダでは、一般に自身の体質であるドーシャが増大することで不調になっていきます。
なので自身の体質と同じドーシャの食品を過食しないようにすることも求められています。
例えば、私の場合は、ドーシャはヴァータ(正確には月のヴァータ)なので、
ヴァータの性質の食品(苦味や渋味のある食品)を摂りすぎないように注意する必要があります。
つまり、ヴァータは主に乾いた性質ですので、カファやピッタのように水分や油分のある食材もある程度摂ることも重要です。
同様に、ピッタ体質の人は、ピッタの性質の食品(酸味と塩味の食品)を摂りすぎないように注意する必要があります。
つまり、ピッタは主に熱い性質ですので、ヴァータやカファのように冷たい性質を有する食材もある程度摂ることも重要です。
同様に、カファ体質の人は、カファの性質の食品(甘味と塩味の食品)を摂りすぎないように注意する必要があります。
つまり、カファは主に重い性質ですので、ヴァータやピッタのように軽い性質を有する食材もある程度摂ることも重要です。
これは、私の洞察ですが、アーユルヴェーダでは、強調はされてはいませんが、
身体にあまり負担をかけずにエネルギーを効率よく生みだすのは、ブドウ糖や果糖の糖質です。
ですから食事は、量的には糖質(または消化の良い炭水化物)を中心として、糖質を常食にすべきだろうと思っています。
ところが、最近は糖質制限という食事術が注目を集めています。
次回のメルマガでお話ししますが、実は糖質の厳しい制限は、とても危険な食事術です。
ただし、前述しましたように、カファ体質の人は、同じカファの性質を有する糖質や炭水化物の摂りすぎには注意する必要があります。
それから、自身のドーシャに合った食事を摂ること以外に、もう1つ重要なのことがあります。
それは、前述しました自身の寒熱に係る体質、つまり熱がりの人(温かい飲食物を好む人)か、寒がりの人(冷たい飲食物を好む人)かの体質に合わせた食事をすることです。
ヴァータ体質の人には、実際に熱い体質の人と寒い体質の人がいます。熱い体質の人は、前述した太陽のヴァータ体質の人で、寒い体質の人は、前述した月のヴァータ体質の人です。
ヴァータの熱い体質の人は、身体を冷やす食材の方が合います。
ヴァータの寒い体質の人は、身体を温める食材の方が合います。
ピッタ体質の人は、一般に熱がり体質ですので、身体を冷やす食材が合います。
カファ体質の人は、一般に寒がり体質ですので、身体を温める食材が合います。
この2つのポイントが、体質に適した食事選びの基本です。
それでは、あなたのドーシャを判定してみましょう
様々なアーユルヴェーダの書籍に問診表が載っていますが、
私が、簡単にしかもより正確に判断できるように下表を作成いたしましたので、
是非、チャレンジしてご自身のドーシャを知って下さい。
ヴァータ | ピッタ | カファ | |
体形 | 中肉中背か、やせ型 太りにくい | 中肉中背 | 逞しいまたは肥満型 太りやい |
耳 | 細くて縦に長いか、 薄い(耳たぶ大きい) | 厚い | 大きい |
髪 | 乾燥して粗く硬いか、 乾燥して細い | 絹のように柔らかく細い | 黒く光沢があり量が多い |
皮膚 | つっぱっているか、 薄くて弱く細かなしわが多い | 柔かく光沢があり、赤っぽい | 湿っていて脂性で、白っぽい |
上図でよく当てはまるのが、あなたのドーシャです。
もし迷うことがあれば、「髪の毛」の項目を重視して決定してください。
いかがですか、ご自身のドーシャが判明しましたでしょうか!
是非、ご自身の体質(ドーシャ)に適した食材・食事を理解して、
日々の食事に生かしてください。
あとは、その体質にあった食事内容であっても、やはり好き嫌いというものがありますから、ご自身でご自身に適した食材や料理のバリエーションを増やしていかれたら良いのではないかと思います。
最後に、アーユルヴェーダで食事において、とても重要な注意事項がありますので、それをご紹介したいと思います。
お腹が空いてから食事を摂るようにしましょう
アーユルヴェーダでは、「消化力」というものをとても重要視します。
なぜなら、消化力がない時に食べたり、消化力が普通でも食べ過ぎると、消化しきれないからです。
消化しきれないと栄養にならないだけでなく、折角の食物が不消化物という「毒素」に変わるとアーユルヴェーダでは注意を促しています。
この毒物は、「アーマ」と呼ばれ、体調不調や病気の大きな原因であると考えられています。
ですから、消化力があるとは、お腹が空いたと感じる時ですので、時間になったら必ず食事を摂るのではなく、お腹が空いてから食事を摂るようにしましょう。
食事と食事の間は、最低でも3時間ぐらいは開けるように指導されます。
そして、消化力を上げるために、食事中に白湯を少しずつ飲むことや、ショウガなどのスパイスを一緒に摂ることが薦められています。
食事は、できるだけゆっくりと楽しんで食べるようにしましょう
できれば、食事は、ゆっくり味わいながら楽しんで摂ることが理想です。
そうすることで、消化力も高まり、活力も生まれ満足感を得ることができます。
食べた後は、しばらくは動かずに、ゆっくりとすることも重要です。
参考文献
① 大いなる生命学:青山圭秀著、三五館
② アーユルヴェーダ:上馬場和夫・西川眞知子著、農文協
次回は、糖質、たんぱく質、脂質などについて、最近の研究も踏まえた食事術をご紹介したいと思います。
Comments